#郊外、#リノベーション、#カフェ、#まちづくり、#工作室
・概要
建築家の菅原大輔さんが運営するFUJIMI LOUNGE(フジミラウンジ)。調布市で設計事務所をまちに半分開くことをコンセプトとして2階・3階にある設計事務所だけでなく1階に書店を兼ねたカフェ、地下にはまちの工作室として工房を運営しています。まちの拠点となるコミュニティスペースを収益モデルを見据えながら展開することで持続可能な活動へと繋げています。
目次
・建築家紹介
・郊外に地域のコミュニティ拠点をつくる
・クリティブディレクターという肩書
・持続可能なまちづくり
・新たな建築のあり方を目指して
建築家紹介
調布市富士見町でSUGAWARADAISUKE建築事務所の代表取締役を務める菅原大輔さん。大学院卒業後、日本の建築事務所、フランスの建築事務所で経験を積み日本に帰国後自ら事務所を立ち上げます。一級建築士という肩書だけでなくクリエイティブディレクターとして、今回訪れたFUJIMI LOUNGE(フジミラウンジ)をカフェの店長として運営し、その他に渋谷区景観アドバイザー、調布市のまちづくりプロデューサーなど多岐に渡るフィールドでご活躍されています。
ホームページ:http://sugawaradaisuke.com/
郊外に地域のコミュニティ拠点をつくる
菅原さんはフランスの設計事務所を勤めた後に、帰国後調布で設計活動を始めました。調布を事務所に選んだのは偶然とのことだが、元々東京都の郊外で何かやりたいとは意識していたと語った菅原さん。事後的ではあったが調布の観光スポット・大学・公園といった多様な場所が存在し、都心からのアクセスが非常に良い立地のポテンシャルなど魅力に惹かれたそうだ。そのまちの魅力的な点を繋ぐ場としてFUJIMI LOUNGE(フジミラウンジ)ができた。
そこには建築家として全国の中山間地域や消滅可能性都市と呼ばれる地域の拠点施設を設計活動をする中で、設計に関わるだけでなく拠点運営を通して自分ごととして解決していければさらに思考が広がると考えがあった。東京郊外は地方のそのような地域のコミュニティ・モビリティなどといった同様の問題を抱えているため打ってつけの場だったそうだ。
そもそもまちづくりに目を向けるきっかけになったのはパリで過ごした経験が根源になっていると語った菅原さん。パリは建築単体の魅力よりもまち全体が持っている魅力、カフェを通して地域コミュニティが繋がる文化や人間の生活を形づくる地域のあり方がまちに対する視座を高めたそうだ。
そんなパリでの影響を反映したFUJIMI LOUNGE(フジミラウンジ)は「まちに半分開いた建築事務所」というテーマで運営をしている。2・3階は事務所として閉じた空間になっているが、1階にはカフェが入り、店内の壁にはまちに半分設計事務所を開くということで事務所の書籍やまちの情報が記載された資料が並べられている。地下では「まち工作室」を運営し、事務所の模型室でありながらまちに半分開きまちの人がDIYなどで利用できる場になっている。本来は閉じ気味になっってしまう場所をオープンにすることでまちのいろんな人が訪れることを期待しているそうだ。
実際にコロナ前後で比較するとFUJIMI LOUNGEに地域の方が来る機会が増えたそうだ。「仕事をする方もいればただ休みに来る方もいて今まで見たことのない人が来てくれるようになりました。事務所としてSTAY HOMEからSTAY HOMETOWNを掲げていてその様子が見えてきました。」
2階の事務所の様子
地下1階の「まちの工作質」:Jeremie Souteyrat
クリティブディレクターという肩書
菅原さんは建築家としてだけでなく多岐にわたる事業に参画している。クリティブディレクターは広告業では一般的な名称のようで、内容としてはコンセプト・お金の価値・作品のクオリティを見る仕事を主に行なっているようです。「企業ブランディングや教育事業のプログラムを企画したりと建築物だけでなく様々な職種で設計活動を行っているので建築家よりもクリティブディレクターの方が正しいのかなと思っています」と建築の設計活動の枠を超えたアウトプットが菅原さんの特徴だ。
現在は調布市から空き家対策のアドバイザーとして指名されたのをきっかけに調布市の空き家活動に参加しているとのこと。FUJIMI LOUNGEは新築ではなく空き家を改修した物件で、FUJIMI LOUNGEがある地域は調布市の空き家重点地域にも指定されていることもあり調布市空き家エリアリノベーション事業に携わったいる。(https://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1600219882898/index.html#2-2)
3ヵ年事業の本事業は今年が2年目となり前半はトークイベント、後半は空き家活用の資金運用シミュレーションと空き家の改修ワークショップ開催し、3年目で実際に空き家を見つけて実証実験を行う予定。全国で空き家問題は頻繁に取り上げらてるが一方でなかなかその空き家にたどり着かないことに関して菅原さんは、
「空き家が見つからないのは仕方がないことなので変に焦らず時間とお金と目標設定の中で精一杯やるしかないかなと思っています。」とそれまでのプロセスが重要であることを語った。
持続可能なまちづくり
菅原さんにとって、まちづくりは良いことをしていても持続性がないと意味がないものとして捉えている。「FUJIMI LOUNGEも収益性を持ちながら社会に実装できるかのエリアリノベーション事業なので,民間による公共的空間は何かと考えながら活動しているので、民間の事業者がまちのために一部を開きながら公共空間を運営して儲からないと意味がないし、継続的に意味があることをやっていきたい。」とあくまでボランティアではなく市場の中でまちづくりの可能性を見出そうとしている。
「公共的の的がすごく重要で稼ぎながら地域に開いて公共性を持つことでそれが集客につながったり自由な使い方を許容する。」一般的な公共の概念では、公園のような誰しもが平等に使えるようにするためにボール使用禁止などのいろんな制限がかかって何もできない場所ができてしまうことに疑問を感じているみたいだ。そうではなくある思考を持った人達が自由に集まり楽しむ場を提供した方が有益だという考えをまちづくりに持っている。
「まちづくりで稼ぐというよりはまちの中で稼いで実証するしかないと思っている。その後に善に向かっていくのだと思います。自分で投資して仕組みを作っているのでビジネスモデルを構築するしかないですし、自分が幸せじゃないのに人を幸せにすることはできないと思います。」
新たな建築のあり方を目指して
菅原さん世代の建築家が従来の建築の職種である設計活動から職種を広げ活動しているのには社会と関わりがあるそうだ。「成長経済が崩壊しているため国家という存在が揺らぎ自分次第で生きていかないといけないのではないかという価値観が変わっているのだと思います。30歳前後で東日本大震災を経験し建築家がシフトチェンジした切っ掛けなのかなと思います。」震災や台風災害、さらにはコロナの猛威が日本を襲い、世界で資本主義の限界を訴える声が生まれ不安定な世の中で建築家のあり方も見直されるべきなのだろう。
そしてこれからの活動について伺ったところ、「収益モデルをしっかり作っていくことをできれば調布、他には山中湖でもまちづくりに携わっているのでそこで拠点を作って幾つかの拠点を運営しながらネットワークを形成しながら地域とか県とかを跨いだ新しい交流を構築していきたいと思います。新たなソフトを構築しようとしているのは、そのソフトをアウトプットしたハードが今までの建築を変えると信じているからやっている。そこまで繋げられたら成功だと思っています。」とまちづくりで作り出そうとしている新たなシステムから建築の変革まで見据えていた。多様な活動を繰り広げていてもやはり見据える先はあくまでアウトプットの部分なのだろう。
(文責:遠山 正一郎)
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